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立澤 梓早

女児1人男児1人の母、食いしん坊な助産師

資格

助産師 / 保健師 / 看護師

出身地

和歌山県和歌山市

経歴・職歴

金沢大学医学部保健学科看護学・助産学専攻卒
都内の産院、クリニック、保健センターでの勤務経験あり

好きなもの

美味しいもの、星空や宇宙の写真

人間がどこまでお産に介入していいのかを悩みました。

助産師になったきっかけを教えてください。

本当は理学療法士になろうと思っていたんです。というのも、私が通っていた高校は野球がとても強かったので、全校応援で試合の応援に行くというルールがあったんです。
甲子園で勝ち進んで優勝した選手たちを応援しているうちに野球が好きになり、プロ野球も好きになりました。当時はイチローさんや高津臣吾さんがとても活躍されていて、どうやったらその選手たちに近づけるかというミーハーな感覚で将来を安易に考えていました(笑)
でも自分は別にスポーツができるわけじゃないから、どうやったらこの私でもその世界に近づけるかって思った時に、理学療法士としてスポーツトレーナーになるっていう道があるかもと知り、最初はそれを目指しました。ところが見事センター試験に失敗。
どうするか考えた時に、ちょうど姉が看護大学に通学中だったのと、入学後に看護学科から理学療法学科に転科するという方法もあるという情報も入手したので、とりあえず看護学科に入学することにしました。でも実際看護実習をやってみて、理学療法士さんとも接点があって関わったりしながら実習したりしている間に、看護師の方が面白いなっていう感覚になってきたので、結局そのまま看護学科で学び続けることにしました。

そして進学した大学では、4年生の時に全看護学生の中から選抜で10名ほど助産師の勉強も一緒にまとめてできるというプランがあったんです。
3年の母性看護実習で双子の赤ちゃんの自然分娩に立ち会わせていただけたことでお産へのなんとも言えない感動も経験して、ダメもとで助産専攻の選抜試験を受けてみたところ運よく受かったのがきっかけで、大学4年の時に一気に看護師と助産師と保健師の資格を取ることができました。

もう助産師への道へ導かれていましたね(笑)

そうですね(笑)そして最初の就職先が年間2,000件以上のお産がある産院で、最初の配属先がNICU(新生児集中治療管理室)・未熟児室だったんです。
看護師1年目からいきなり未熟児や病気がある赤ちゃんと接していかないといけないことになりました。
でも、大学4年目で一気に看護師も助産師も保健師も資格を取らないといけなくて1年で全部をやったわけですから、本当に紙ベースの知識しかなくて、実習も薄っぺらい感じでしたので、実際やる仕事なんかは全然分からないし、1年目はもう本当に使えない人でした(笑)
いつもすみませんばっかり言ってましたね。それで毎日先輩に教育してもらい、必死で働いていました。

そんな感じで、早く生まれちゃった赤ちゃんやお見送りした赤ちゃんたちと濃い1年半を過ごしたあと、分娩室勤務、次は病棟勤務、外来勤務と異動していき、トータルで5年働きました。実のところ3〜4年目くらいからでしょうか、年間2,000件のお産がある場所で仕事し続けていたらベルトコンベアの作業のように次から次へと仕事をこなす感覚になってきて、だんだん最初の感動がなくなっていく自分がいました。
心から丁寧に向き合うのは業務をまず終わらせてその次のことになるし、あとやっぱり業務体制の都合で日勤から夜勤に入るってなったら、もう早く分娩を終わらせようかみたいになって吸引分娩だったり会陰切開だったりとお産への介入が入るんですよね。日勤は人がいっぱいいるから、お産に持って行きやすいけど、夜は人数が少ないのでその中で働くためには色々あるわけです。
そういうのを見てると、人間の手でそうやってお産をコントロールしていいのかという疑問が湧いてきて、すごくモヤモヤし始めました。

そうなんですね。もっと丁寧にお産に向き合いたいという気持ちを実現するために、どうしましたか?

そのモヤモヤを解消したくて、自然なお産をやってるところに研修しに行きました。
「吉村医院」をご存知ですか。もう亡くなりましたけど、愛知県に自然なお産を大事にしているとても究極なおじいちゃん先生がいらっしゃったんですね。結構有名な医院で、書籍もいくつかあり、「いのちのためにいのちをかけよ」とか、ドキュメンタリーの映画の「玄牝」という映画もあります。
本当にとことん自然なお産を目指す所で、ゴロゴロ、パクパク、ビクビクはいかんという先生の教えを元に、妊婦さんが床拭きや薪割りをしたりして、いっぱい運動してもらってお産に望むような所でした。
吉村先生は命に対して「生きるものは生きるし、死ぬものは死ぬんじゃ」みたいな究極な名言をおっしゃっていましたね。

180度違う場所ですね!(笑)究極に自然なお産をされている。

お産にも運よく立ち会わせていただいたんですけど、衝撃的だったのが院長先生は全然何一つしないのです。カメラだけ手に持って、ただ見守ってるだけ。お産が終わるまで見守るだけで、助産師が赤ちゃんを取り上げて、それを静かに佇んで、カメラで写真を撮られていらっしゃいました。

翌日の早朝いきなり吉村先生から呼び出されて、車で山の近くの田んぼの中に連れていかれたんです。山際から朝日が昇るのを吉村先生は静かに拝んでいらっしゃいました。
そして一言、「お産はこれと一緒だ」とおっしゃったのです。
最初は意味がよくわからなかったんですが、お産って太陽が昇ってくるのと同じぐらい自然なことであって、「お産は人間が操作できるようなものじゃない」ということを吉村先生は伝えたかったんだとわかり、その先生の哲学がその後の私の助産師人生を大きく変えるきっかけになりました。

衝撃的な経験ですね。それは人生変わってしまうかも。。その後どうしたんですか?

お産の家での研修が終わって、自分が今まで働いていた職場に戻ってその世界を冷静に見たら、「私のやっていることは一体何なんだろう」という感覚になってしまって、産院ではもう働けないという気持ちになってしまい、退職して自分を見つめ直すことにしました。
とりあえず全然違うことをしようと思って、アイルランドにワーキングホリデーに行くことにしました。アイルランドで1年間、英語の勉強したり、バイトしたり、旅をしたりして、今までと全然違うことをしながらこれからの人生をどうするかを考えました。
そして1年経ってやっぱり助産師に戻りたいなっていう気持ちが強いことに気づきました。

自分を見つめ直した結果、まだ助産師になりたいと思ったんですね。その後はどんな場所に勤めたんですか?

それで日本に帰ってきてからは、吉村医院の先生の考え方を取り入れていた自然なお産を勧めるクリニックに務めました。初めて立ち会ったお産がとってもシンプルで美しくて、自然なお産ってこんなに医療者はやることないんだっていう感動がありました。
そして1年半くらい働いたころ、なかなか自然に産めない人や手がかかる妊産婦が増えてきたことや3.11の震災もあったことで、ある日先生がクリニックを閉院するって話になりました。

そのときに、次どうしようってなって本屋さんでたまたま「産むからだすこやかに」と言う本を見つけたんです。その本には片桐弘子さんという助産師さんのお話が書かれていたのでうすが、すでにご病気で亡くなられていたので、ネットでその弟子を探そうという発想が浮かび、「片桐弘子 弟子」でネット検索したんです。
そしたら、ブリージングのマサさんのサイトにヒットして、ページに貼ってあったYouTubeチャンネルに辿り着きました。あれって思って見たら、純子先生が映っていました。「この方の笑顔、なんか見たことあるぞ?」と思ったら、大学時代に見たテレビ番組に、純子先生が出演していてビデオを撮って見ていたと言う記憶に繋がりました。

「この先生のところで働きたい!この先生に人生相談と就職の相談に行こう」と思って、健康相談の予約を取りました。

バースハーモニーへ辿り着くべくして辿り着いたんですね!行動力も凄まじいです。それはいつ頃の話ですか?

それが2011年の夏で、ちょうど湯本さんという元バースハーモニーのスタッフの方が沖縄に移住されるとのことで辞めるっていう時期だったんです。ちょうど私が現れたので、「バースハーモニーで一緒に働かない?」と先生から逆に言っていただき、「ぜひ働かせてください!」という流れになりました。
それでもうここでずっと働き続けて、気付いたら今年で12年目です。

病院のときは、業務が流れ作業みたいな感じで、私はやっぱり一人一人を丁寧に見たかったんだと今は思います。
継続してその人がどういう妊娠出産経過をしているか、それを最後まで見ていくことが、病院では日常の業務に追われてなかなかできなかったりするのが嫌だったんです。
また、お産といったものを果たして人間が都合よくコントロールしてしまっていいのかも悩んだりして、自然なお産を目指して行きたくなりました。
一人一人を丁寧に見ていくのが自分に合っていまして、その行き着いた先がバースハーモニーでした。

お産において「楽」という言葉を「楽しい」に変えていきたいです。

助産師として働く中で心がけていることはありますか?

やっぱり、ここでのお産がいいと思う理由は、産む人がその人らしく、その人の本来の姿に戻れる場所であるからですね。
本来の自分に戻れた方は、赤ちゃんとのリズムとも合っていくので、やっぱり安産なんですよ。だから、私の仕事は本来の自分に戻れるお手伝いをすることだと思っています。

まずは、魂は大人も子供も皆が「平等」というところを大事にしたいです。普通は、「赤ちゃんだから」とか言って、どうしてもお母さんの方が上になっちゃって、上下意識が生まれちゃいますよね。
私が子供であるあなたを世話しなきゃいけないとかの親子関係は、平等ではなく、上下関係になってしまいます。赤ちゃんに対しても、ちゃんと尊重して、新しく地球の世界にやってくるのをお手伝いしたいですね。

赤ちゃん・子供を一人の人間として尊重するって本当に大事ですよね。それをできるようにするには、どうすればいいでしょうか?

それができるってことは「楽しむ」ってことができるということです。お産っていかに楽しめるかだと思います。
赤ちゃん自身にとっても、産む人にとっても、赤ちゃんの家族やサポートしているみんなも、やっぱり楽しいって思えた方が良いです。
楽しいのってみんなに伝わりますし、楽しまないとこの体験が勿体ないですね。

「楽」という言葉って、「楽しい」と紙一重みたいに近い言葉だけど、全然違う意味だとすごく思うんです。今の時代のお産は「楽」を求めようとしている気がしていて、それこそ無痛分娩が最近はメジャーになってきていて、楽しいことを楽に変えようとしている気がします。

楽であることはかなり受身的で、楽しいというのは能動的な感じですよね。どっちかというと私は能動的にやっていきたくて、やっぱり自分が自分と向き合って、自分でやっていくっていうのが、お産の一番の楽しさだと思っていて、自分が自分らしくあると何でもうまくいくんですよね。
それを妊娠・出産を通してやらせてもらえる絶好のチャンスが来てるっていう気がします。そのチャンスをいかに楽しくできるかをいつも考えているんです。
自分に向き合うのが怖い方もいるけど、私は自分と向き合うのが好きなので、一緒にやっていきたいと思います。
一緒に向き合ってくれる人がいれば、絶対楽しいし、心強く向き合えるかもしれないじゃないですか。

そうですね。自分と向き合うってエネルギーがいるし、怖い気持ちもありますよね。妊娠・お産は自分と向き合う、本当にいいチャンスだと思います。

病院でのお産を好んで選ぶ方々は、お産を自分と向き合う通過点として見てないのかも知れないと思います。
逆に言うと、バースハーモニーを好んで来ている方々は、もうそれをやりに来ている気がしていて、妊娠・出産を「魂の学びの時期」という風に人生において転換期として自分と向き合える方々が多い気がします。
お産ってすごいことだから、そこでちゃんと自分と向き合えた人はやっぱり人生を変えられるわけですね。
中には以前の自分たちが思い出せないぐらいに変わって、「前はこんな人だったっけ?」みたいに変わるような方もいらっしゃいます(笑)

でも、それが本来の自分たちだなってことですよね。みんなそうやって、変わっていくのを見てると、すごい楽しいです。逆にパワーをもらってるし、刺激にもなりますね。いつも幸せを頂いています。

お産を機に人生変わっちゃったみたいな人が増えたら、結構面白いじゃないですか。

自然誕生の考えを聞かせてください。

手を加えすぎないありのままの人が自然とうまく調和してることで自然誕生ができるんだと思います。私は多分、自然なお産のそのシンプルさと美しさに魅了されて、こっちの世界に来たんだと思います。
ただ単にその世界観が好きで、好きだからここにいるんだと思います。

収入がちゃんとあって、働くスケジュールが規則的で、人間的に安定した生活を過ごしたいとか、そういう気持ちもあるんだけど、そういうことを求めすぎると、自然誕生ってなかなか難しい部分があります。
人間の都合でやってると、なかなか自然には出会えなかったりもしますよね。お産って、赤ちゃんのタイミングだったり、お母さんのリズムだったり自然界のリズムとかいろいろと調和して迎えるもので、一つとして同じお産はないというのが魅力的なんですよね。

お産の数が少なくなってきて不安だったりいろいろありますけど、でも結局それらはどうにかなるものですね。お産が増えてくれると嬉しいけど、自然って固定されてないじゃないですか。その時代によって移ろうとするものですよね。
昔は、自然なお産って本当に何も手を加えないことだと思っていました。自然に対する概念が、バキバキだったというか、普遍しないみたいなイメージでしたね。

経験が重なった今は、自然ってそうじゃないなと思います。その時代によってその自然も変わるものだと思います。
この時代にとっての自然だとある意味それも自然と呼んでいいというか。例えば、無痛分娩するとか、促進剤を使うとか、それがその人にとって自然なのであれば、それも一つの自然誕生であるという風に最近はちょっと緩くなりました。
だから昔は何かそこへのこだわりが大きかったけど、医療的なものを受ける必要がある人には、それが自然なんですよね。

そうですね。「自然」の意味が昔とは変わってきていますね。その時代と人に合った「自然」があるんですね。

今は、皆んなが自力で医療の力なしでお産できるって感じではないっていうのはわかりました。
自力で産める体である人が減ってきているのです。今の人間って肉体的にもそういう生活をしていないし、ある意味自然ばっかりを目指すのは不自然みたいな感じになってきたかもしれません。
今はみんなが畑仕事をしている感じではないですから。野性的な人間って減ってるのかなと。そもそも、やっぱり人間本来の能力を発揮できなくなっています。自然治癒力とか、そもそも持ってるパワーが下がっています。そこを少し取り戻していけばいいのかなと。時代的にはめっちゃマイナーですけどね。
でも、こういう世界もあるんだよって知ってもらえて、「やりたい」「楽しそう」みたいな感じで、バースハーモニーに産みに来てくれるポテンシャルのある人が増えて、楽しんでもらえたらいいなと思います。
それでお産を機に人生変わっちゃったみたいな人が増えたら、結構面白いじゃないですか。

ぜひポテンシャルのある方達にどんどんこの世界のことが届いたらいいですね!

そうですね。全員が医療に頼らないと生まれないわけではないです。まだ知らないだけです。
自分らしく、安心して、リラックスして産むっていうことが安産につながるので、なるべく産む方自身が自分の最大限の力を引き出せるようにお手伝いして、一緒に新しい命を温かく迎えられたらといいなと思いますね。

自然なお産の魅力を知ったら、きっとそっちの方を選んでみたいと思う人も出てくるんじゃないかな。
そういう感じでお産される人って、本当に美しくて、シンプルなんですよね。お産自体も「もう終わり?」みたいな感じなんです。
病院勤務から、初めてお産の家に勤務した時に、その違いが衝撃的すぎでした。「え?これで終わりでいいですか?」みたいな。病院で働いていた時なんかは、なんかすごくややこしく感じていて、色々やることも多いし、すごく業務的だったのが、自然に生まれることを見て、お産ってこんなにシンプルだとすごく驚きました。
複雑にしていたのは我々人間だったんだみたいな、なんかそういう感じなんですよね。
そのような誕生の仕方に出会えて、嬉しいからここでずっと働いているんだと思います。

ママがご機嫌で健康だったら、基本全てうまくいくんです。

これからママになる方々へ伝えたいことはありますか?

最近自分がすごく思うのは、「ママをもっと大切にしよう」ですね。
要するに、ママという存在って、自分で自分をすごく犠牲にしてこそなんぼみたいになりやすいじゃないですか。やっぱりすごく尊い仕事ですよ。24時間365日無休無償でやっていて、無条件の愛でやるっていうのがね。すごい偉業だと思うので、ママをもっと大切にしたいよねと皆んなに伝えたいです。

自分自身も、自分で自分をちゃんと無条件に愛するってとても大事だとつくづく思います。
自分自身を大切にしないと、周りに迷惑をかけることになりますね。ママがご機嫌で健康だったら、基本全てうまくいくんです。ママがやっぱりなんか疲れてくると、全部ギクシャクしちゃうんですよ。なので、ママが楽しくご機嫌で、毎日過ごしてほしいなと思います。
もしバースハーモニーにいらっしゃって、そのためのお手伝いができたら、幸せだなと思っています。